「謝る相手間違ってるんじゃない?」
松本はそう言って、一歩俺に近付いた。
「…え…」
「だから!机にごめんじゃなくて"麗奈"にでしょ?」
「……!」
"高橋"が出てくると、俺の胸はちぎれそうで、張り裂けそうで…。
「…悔しいけどさ、あんたじゃなきゃ麗奈ダメみたい」
「え?」
松本の言葉に振り返る。
「…笹岡の事、すごい好きなんだよ?」
"好き"
その言葉を聞いただけで、俺は瞳が熱くなった。
涙が溢れそうで…怖かった。
そして、身体は本能的にあいつの後ろ姿を探した。
走って、走って…
あいつの姿を探した。
あいつの泣き顔を思い浮かべながら…。
そうだよ。
あいつはいつも俺に素直で真っ直ぐで、俺に全てを見せてくれてた。
なのに、俺って何でこうなんだろ。素直じゃなくて、素っ気なくて…。
あいつの言葉を信じようとしなかった。
ただ、かっこつけてた。
結局あいつが離れて行くのが怖くて。
そんな事しなくても、あいつは離れていかないって…思える自信がなかった。
今更、遅いかもしれない。
今ごろ、あいつに"好き"なんて言葉…
必要とされてないかもしれない。
でも、…いいんだ。
そしたら今度は俺があいつを追い掛けたらいい話。
あいつが俺にしたように、俺があいつにすればいいんだ。
とりあえず今すべき事は、あいつを追う事。
それで、あいつを追い掛けて…思い切り抱き締めてやるんだ。
今度こそ、"好きだよ"っ…て。

