「笹岡君!」
学校の授業が終わり、最後のSHRが終わった。
教室から出ようとしたその時、俺は長塚に呼び止められた。
「長塚、なに?」
「あ、あのこれ、高橋さんのなんだけど…」
俺の目の前に差し出したのは、少し薄黒く汚れた体操服。
胸元に書いてある名前は
"高橋"
あいつの名前だった。
「これ、何で長塚が?」
「…さっき、ゴミ捨てに行ったら、たまたま見つけたんだ。」
「ゴミ捨て場で?」
あいつ…何でゴミ捨て場に体操服なんか捨ててんの?
「…で、高橋さんと今から会うんでしょ?」
「えっ、あ、うん…。何で知ってるの?」
「朝、教室で騒いでたじゃん」
長塚はクスッと笑った。
「見られてたんだ…。これ、あいつに渡しとけばいいの?」
「うん。お願いできるかな?」
「全然いいよ。」
俺は長塚からあいつの体操服を受け取った。
「じゃあ、あたし行くね?」
長塚は手を振って、走り去った。
3組の方を見てみると、まだ終わっていない様子。
いつもなら、俺が出た時にはあいつはいた。
…"素直になれよ"
雄大の言葉を思い出す。
俺も少しだけ…
素直にならないとだめだよな…
今日は俺が迎えに行こう。
何故かあいつの喜んだ笑顔を見れる
そんな気がした。