「ところで麗奈ちゃん」
「はい?」
すこし無言で、道を歩いていると。玲さんが笑って話しかけてきた。
「今週の土曜日にある、予選…見に行く?」
「叫心の…試合ですよね?」
「もちろん!」
本当に今日の玲さんはおかしい。
だって、あたしはもう叫心の彼女じゃないのに。どうして、応援に行かないとだめなのかな。
それこそ、叫心に嫌われてしまうことになっちゃうんじゃないだろうか。
「あたしは、行けないです」
「何か用事?」
「いえ。そういうのじゃなくて…」
「もう彼女じゃないから?」
「…、はい」
もう泣くこともできなくなってしまったようだ。苦笑いを零すことしかできない。
「俺、見に行こうと思ってたんだけどさ~」
「…?」
「仕事が入っちゃってさ。だから…」
「代わりに行け、と?」
「はい、そうなんです」
この人はっ…、変というか、不思議だといいますか…。
何を考えてるのか、全くわかんないや。
さっき叫心と別れたっていう話をしたばっかりなのに。
「麗奈ちゃん、お願いね」
玲さんのその頼みごとに、あたしはイエスとも、ノーとも言えないまま。ただ、見つめることしかできなかった。

