「きょーしーんっ!待ってくれよー!」
「マジで雄大歩くのおせーって!」
あたしと愛が自分達の教室にちかづいてくると、叫心と小林君の声が聞こえてきた。
きっと、サッカー部も朝練が終わったのだろう。その証拠に遠くから来る叫心の制服は前ボタンが何個か開いていた。
「あ、麗奈おはよ!」
あたしに気付いた叫心は挨拶をしてくれた。
「お、おはよー、叫心!」
何だか、いつもはあたしから挨拶をするからこんな風に叫心から挨拶をされると変に緊張してしまう。
「朝練だった?」
「おぅ」
「疲れた?お疲れ様だったね!」
「まぁ余裕だけどなっ」
"ヘヘ"っと笑いながらそういう叫心。
その姿はまだあどけない幼稚園児の頃のような笑みだ。
「あれ?高橋~!俺にお疲れはないの?」
後ろからひょっこりと現れたのは小林君。
「はぁ!?何で雄大なんかに言わなきゃなんないんだよっ!」
あたしの言葉を遮って叫心は小林君の頭をパシッと叩いた。小林君は"いてーよ!!ごめんって!!"と苦笑いを零しながら頭を抑えていた。
「お前にはあいつからの優しさいつももらってんじゃん」
叫心はそう言って後ろを指指した。
「うげ!?長塚!?」
小林君は驚いたかのように、肩にかけていたエナメルバックを地面に落とした。
あたしと愛も叫心が指した方向を見てみると、長塚さんが"雄大くーん!"と言って走り寄ってきていた。
「朝練行ったらすぐ行っちゃうから、タオル渡せなかった…!!はい!!お疲れ様!!」
長塚さんはそう言って小林君にピンク色の可愛いタオルを手渡した。
その瞬間の長塚さんはまるでラブレターを渡しているかのような表情をしていた。
「あ、…ありがとな…」
そうテレながらお礼を言う小林君。
少しクールなその仕草とは裏腹にきっと内心すっごく嬉しそうだ。
あたしと叫心と愛はその二人のなんだかラブラブの様な雰囲気を壊さないように、くすくす笑いながらもゆっくり立ち去った。

