「おっす!…なにしてんだ?」

あたかも後ろからやってきました、というかのように俺は背後から麗奈に声をかけた。



「きょきょきょ、叫心!」


案の定、麗奈はかなり驚いた様子で俺を見つめた。



「いや、驚きすぎだろ?」

「だっていきなり現れるから…」

「そっか!いつもならお前がいきなりだもんな」


クスッと微笑むと、麗奈もつられて笑う。
この瞬間、俺はすごく癒される。

麗奈の笑顔を見るたび、癒されていく気がする。



こんな笑顔、絶対片想いだった時には見る事が出来ないプレミアものだと思う…!



俺…絶対世界一の幸せモノだ…!


だけど、今日の麗奈はどこかソワソワしていて様子がおかしい。
いや、元気がないというか…それよりかは何か言いたそうでしょうがないみたいだ。


そう思ったら、急に麗奈は言葉を紡いだ。



「…玲って人……叫心の知り合い?」

びっくり仰天。
なんで麗奈の口から、兄貴の名前が出たのかがさっぱりわかんねぇ!



「ゴフッ…!…」

俺は麗奈の質問を聞くと、情けなくむせてしまった。…というか、それくらいびっくりした。


「ちょ、叫心だいじょ…「どこで会った!?」」




俺は必死に兄貴と出会った場所を聞く。麗奈の腕をギュッと掴みながら。



麗奈は、少し苦笑いを零して呟いた。


「昨日、ナンパに絡まれた時に助けてもらった人…だよ?」

「また絡まれたのかよ?!…大丈夫だった?」

またかよっ…!
ほんと、麗奈を一人にすることが、最近怖くてしょうがない。


「うん!全然大丈夫!!…でも、そのあと…その人に無理矢理喫茶店でお茶させられて……ごめんなさい…」


「良かった…。無事なら全然いーよ!それよりそいつの前で俺の名前出した?」


「っ、出しちゃった…かも?」


へへへ、と苦笑い的な、照れ笑いを俺に見せる麗奈。
…そっかー…、言っちゃったのか…。




はぁ。
なんとなく、朝兄貴が言ってたこと分かったような気がする。



…このこと言ってたんだな。可愛い子に会ったって。




…あんの、ボケ兄貴め!