『”シトってすっごく強いんだってさーこんなちっちゃな子供でも』
『じゃあ、”シト”より強かったら俺たちが一番じゃない？』
『そーだよね！』
『”シト”なんていなくたって俺たちで悪いやつらをやっつけるんだ！』
そう言うと、彼らは私にじりじりと近づいてきて、一番体格の良い少年が私の肩をつかんで、乱暴に投げ飛ばした。小柄な私は一瞬、宙を舞い、うつ伏せの状態でそのまま地面に叩きつけられた。うずくまっている私に追い打ちをかけるように３人で一斉に私を踏みつけてきた。痛みと恐怖で声すら出すことができなかった。
『”シト”もたいしたことないなぁ』
『”シト”なんて必要ないんだ！』
痛みの中で私は考えていた。”シト”ってなに？…私のこと…？私は必要ないの…？
そんな時だった。
『やめろぉー！』
少年達は私を踏む足を止め、声がする方を見た。私も声が聞こえたほうに顔をゆっくりと傾けた。ひとりの少年がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
私の上にいる３人はその少年をにらみながら見つめていた。数秒もしないうちにその少年は私の目の前までやってきた。
『その足をどけろ！寄って、たかって・・・こんな幼い少女を・・・』
『なんだよ。邪魔するな！今、誰が一番強いか証明してるんだよ！』
ひとりの少年は足を戻して、彼に歩み寄りながら言った。
『それで３対１なのか？おかしいじゃないか！』
『うるさい！邪魔するならお前も相手にしてやるよ。』
他の二人も少年のほうに近寄っていった。私はその光景を地にひれ伏しながら何も言わずにただじっと見つめていた。
はじめに体格がいい少年が彼に飛びかかった、彼はそれをひらりと交わして、足を前にだして、少年をつまずかせた。勢い余った少年の体は軽く宙を舞って地面に叩きつけられた。少年はすぐ立ち上がり彼をにらみながら言う。
『くっ・・・こ・・・・このやろぉぉ！』
少年のかけ声が合図となり、他の２人も一斉に彼に向かって行った。私は安心したのか、そのまま気絶した。
何か冷たいものが、口の中に入ってくる感覚がして、ふと瞼をあけた。そこには、顔を傷だらけにして、心配そうに見つめている彼が見えた。
『目、覚めた？』
彼がつい先刻までみせていた顔を一変させ、うれしそうな顔をして訊ねてきた。