これが、貴方との出逢い。笑顔がとても印象的な少年だった。今は、わたしの隣であの頃と変わらない笑顔をみせながら気持ち良さそうに眠っている。
あの頃は知らなかった。オウジと言う言葉を。それから貴方が王子だということも。貴方は、王子という地位でありながら、我が国の騎士団の長。貴方の父上、国王の反対を押し切っての決断。民が戦っているのに自分がのうのうとしているのが、解せなかったんだよね。あの時、垣間見た正義感。そのままの貴方が傍にいる。わたしはそれだけで幸せだった。そんなことを想いながら、貴方を見つめていた。
不意に涙がこぼれた。時々どうしようもなく不安になる。シモンと同じようなことが私にも訪れるかもしれない。それも、至極近い未来に。この幸せを失いたくない。貴方と一緒にいること。それが唯一、人として生きていると実感できる。
私は、とても愛おしいく思い、寝ている彼にそっとくちづけをした。そのくちづけで彼の目がゆっくりと開き、その瞳でじっと私を見つめた。
『…どうした…?…涙…』
そう言うと彼は私の頬に軽く触れ、涙をぬぐった。彼の手は私の全身をつつみこむほどに、暖かかった。
『……私は使徒……人じゃない……人に創られしもの…………いつか……いつかシモンのようになってしまうのではないかと思うと不安になる…』
私は涙を流しながら答えた。彼はまた、私の涙を拭った。
『僕は、君を一度もそう思った事はないよ。一緒にいてね…いつも一緒にいたじゃないか。一緒に食事をしたり、寝たり、時には愛し合う…。そう…愛し合うことさえできるんだ…いつか・・・僕の子供を産んでおくれ…』
私の涙はいつしか嬉しいときに流すそれに変った。
泣きじゃくる私を貴方が抱きしめる。今度は彼から、くちづけをした。そのくちづけは、次第に激しさを増し、私の不安を覆い隠すほどだった。彼はくちづけをしたまま、私を優しく押し倒した。そのくちづけは頬、首元、胸と…私の全身を快楽の園へと誘った。とても甘美な一時……私は時が止まってくれはしないかとさえ思った。