代々木から新宿まで痩せ細ってしまった脚だとも忘れて、全力で彼女の家まで走った。

やせ細った肢体、自ら傷付けた躰を彼女に見られたくなかったから、夏なのにコートを羽織っていた。今考えると夏にコートとかどれほど滑稽だったのだろうかと思う。あからさまに変な人に見られていたに違いない。
ただあの時の僕はそんなこと考えないほどに真剣そのものだった。こんな愚かな僕でも助けられるものがあると、騎士(ナイト)のつもりだったのかもしれない。

そう思うことが、その時の僕にとっての唯一の救いでもあったように思える。
 
彼女が住む高層マンション。ひたすら上に向かうエレベーターの中。僕は、はやる気持ちを抑えるなか、彼女のことを想っていた。彼女の部屋の前まできて、一呼吸入れてから僕は、インターホンを押した。
インターホンから聞こえるであろう音声に耳を傾けていると、予想とは反して、ドア鍵が開けられる音が聞こえて、人影が見えた。

しかし、その人影が彼女だとすぐにはわからなかった。彼女も僕と同じように肢体がやせ細っていたんだ。僕より骨格が薄い彼女は本当に見るからにやつれていた。
そんな彼女は僕と違いその躰を露わにして、すぐに僕を求めてきたんだ。

「待っていたんだ。はやく…今すぐしよ…」

彼女の胸はろっ骨が浮き出るくらい痩せこけて、顔もどことなくやつれてみえた。

「華蓮!まさか!?」

よく腕をみたら予想していたことが確信に変わった。彼女の腕には無数の注射痕がみられたんだ。彼女もドラッグの猛威に心も躰も蝕まれていた。

「頼むよ。岳とセックスすれば、また曲が浮かんできそうな気がするんだ!」

彼女は呆然と立ち尽くす僕の服を無理やり脱がしながらそう言った。それと同時に僕は君と会えなかった理由と助けが欲しいと言う理由を理解した。

僕はパンツを脱がされまだいきり立ってもいない僕のモノを彼女は口に含み扱きはじめた。僕は自らと同類の彼女に諭す権利もないことを理解し、僕にできる唯一のことで彼女を救おうとしたんだ。