そこから、彼女の聞きたくなかった話が始まった。


17歳の彼女は家出同然で実家を出て、上京してきた。
もちろん、未成年の彼女が親の承諾もなく家も借りられる訳もなく、上京したての頃は援助交際まがいのことをしていた。街で男を引っ掛けてはセックスをする代わりに食料と寝床を確保していったらしい。

長く居座るときもあれば一日で男のところを去るときもあった。セックスを売りにすることには、何も抵抗がなかった。むしろ、快楽を自由を得ることができるので自分にこれほどまで合う金稼ぎは、ないとさえ思っていた。

ただ一度妊娠してしまったことがあってから、それ以来ピルを服用していた。

そしてそのうちに風俗嬢としてスカウトされ、働きだした頃、彼女は今の所属事務所の社長と知り合った。単純な話、その社長が彼女の客としてついたんだ。本指名として何度も彼女を呼ぶうちに、彼女は色々と自分の身の内話をしてきたのだろう。それで、社長にスカウトされて、事務所に加入した。それからは、次々に話しが決まっていったらしい。

バンドの売りとなった全員女性のグループにすると言うのも、この社長が指示し、メンバーを集めたのだと言う。その後は世間でも知られているようにインディーズ時代を経て、華やかにメジャーデビューを果たしたのだった。

彼女はこの話をおもしろ可笑しく話していたが、僕には聞くに耐え難い話しだった。中学生の頃の初々しい思い出達が砂のように崩されていったようにさえ思ったんだ。


『岳?この後は…』

うわの空だった僕に彼女は改めて聞く。

『お~い、たーけーる!』

『ん?どーした?』

『だーかーらぁ、このあと何か用事ある?って聞いたの』

『この後?…特に用事はないけど…』

『じゃー飲みいこーよ!酒飲めるっしょ?』

男みたいなノリも相変わらずだった。特に予定もなかった僕はその誘いにのることにした。それが過ちの始まりだったのかもしれない。


自由と言う名の奈落の底の…