「あぁ…はじめまして。よろしくね。じゃぁ今度は君の番かな」

僕は、挨拶も早々、君のことを彼女に尋ねた。

「彼女は萌香。ちょっと色々あってね。私が気晴らしにでもってクラブに誘ったの。」
そう紹介された君だったが、浮かない顔から一変して笑顔を見せていた。

「雪城萌香です。よろしくお願いします。」

完璧に作られた笑顔。率直に言うとそんな君がとても魅力的だった。

「ちょ…萌香。敬語じゃなくっていいんだってば」

朱里がマンガでありそうな苦笑いしながら君に呟く。

「あっ、そうか…ごめんなさい。よろしく…ね。」


君…である雪城萌香(ユキシロ モカ)。


僕にとっての君の第一印象は素敵だったけど、どこかほおっておけない、護りたくなるような女性だった。
軽い自己紹介が終わったあとは、他愛もない話をしながら、流れている音楽に酔いしれていた。しかし、僕と君はどこかかみ合わなかった。正確には君がずれていたんだと思う。恭介と朱里は気が合うのか、二人とも話が上手いのか良い雰囲気であった。

必然的に、恭介と朱里、僕と君の二手に分かれるかたちになった。
会話が上手く弾まない僕は、お酒の力を借りていつもの自分を振り舞うことにした。

それが間違いだった。愚かな僕は、どんどん君の深くまで行こうとしていた。