「なぁ、岳。あのこたちは?」

冬でも夏のように暑いクラブの室内。僕は着ていたコートとジャケットを脱いでティーシャツ一枚でいつものように恭介と今日のお相手を探すはずだったが、僕は君を見つけてしまった。

「あぁ…」

恭介は、親指で君たちを指差した。僕は君にみとれていてあいまいな返事しかできなかった。
そんな僕の目の前で手を振る恭介。

「おぉーい」

「ん?」

「なぁーに見とれちゃってー どっちがいい?」
僕は何かを企んでいるかのように恭介に目を向けて言う。

「恭介…お前がいってくんない?」

いつもは僕が軽く声をかけて後から恭介がお得意のトークで場を明るくする。この戦法でだいたいの女性は誘いに乗ってくる。

「あぁ!? なんで?俺が先にいったら成功率低いじゃん」

「いいから!たまにはいってみろよ。トークはお前のがうまいだろ。」

僕は無理矢理こじつけて恭介に声をかけさせた。先に言ったように君に何て話しかければいいか分からなくなっていたから。
そんな僕だったが恭介はいつもと変わりなく誘うと君の友達は難無くその誘いにのってきた。

「おーぃ、岳!」

恭介は自慢げに僕に手招きをしながら僕を呼んだ。僕はちょっと緊張して強張った顔をして君たちのところまで向かった。君と僕との初対面。

君は僕のことどう思っていたかな。君はやっぱり浮かない顔をしていた。

「どーよ、岳。たまにはやるだろ!」

自慢げにそういう恭介。

「ん?どーいうこと?」

君の友達の矢島朱里(ヤジマ ジュリ)は恭介に不思議そうに尋ねた。

「あぁ、ごめんね。こっちの話。これが連れの岳。ほら!岳!」

そういうと、恭介は僕を肘ついた。