僕は、絶望を嘆きながらも、微かな望みを君に賭けることにした。

「タケル…くん…」

頬にガーゼを付けて、僕の部屋の片づけをしていた君は、目をまるくして僕をみつめて言った。

「…た…すけ……て…」

君の姿を見たとたん頬に涙が伝った僕は呆然と立ちすくむ君に縋り寄り、君に全てをさらけだし、哀願した。

君は、そんな無様な僕の頭を撫で、全てを受け止めてくれた。


――君にならーー


その想いで僕は、そのメモと一緒に僕の全てを君に託した。
激しく求め合ったわけじゃないよね。本当に単純な…もっともシンプルなセックス。君はほんとうに僕の全てを抱きしめてくれたんだ。しかしこれほどまでセックスで安堵感を得たことが今まで一度もなかった。それは母と子を結ぶような感覚。不思議な気分だった。

僕は君のお腹の中で君の子どもになっていたんだ。僕の悲しみや不安、痛みすら何もかも全てを包みこんでくれるような安心感。紛れもなく僕は君に抱かれていた。

このセックスの後、僕は決意した。あのメモを渡そうと。
そして、僕にとっても…もしかしたら君にとっても最後の試練が幕を開けた。