チャイムが鳴ると、門脇は「また覗かせてね」と言って校舎へ戻っていった。
俺は屋上に寝転がりストローをくわえる。喉を通るカルシウム。
牛乳。雲。雪。パンツ。
白の断片が脳内を駆け巡る。
良い物を見た。
いや、見させて貰った。
余韻に浸る俺に、乾いた風がそっと頬を撫でた。
「可哀想に」ってね。
「…うるせえ」
「あん?」
その瞬間、億単位の細胞は一斉に活動を停止し、俺は全身の機能を削がれる事となる。
臆病な瞳は、恐る恐る声の主へと招かれてゆく。
腕を組み、仁王立ちする阿修羅。鬼塚あきらだ。
ごくり。固唾までもが、身体の奥深くへ逃げ隠れようとする。
風は言った。
「御愁傷様」と。
同感だよほんと。
「懲りずにまた覗きか」
「いや、それは」
「どこがいい」
「な、なんと言いますか。股の間から見える一瞬の美。例えるならプロのカメラマンが…───」
次の瞬間、鬼塚あきらの一蹴りが空を斬った。
紛れもなく、斬ったのだ。
「違えよ。どこを蹴られてえか、だ。こめかみか。鼻か。あごか。選ばせてやるよ」
「は、ははは。こめかみでお願いします」
「言っておきたい事は」
「ナイス、ピンク」
風よ。何か俺に言う事はないか。
「よおし、歯喰いしばれ」
「…───っ!」
応答なし。
懸命なやつさ。とっくに逃げてやがる。
願わくば、目が覚めた時はベッドの上でありますように。
