「笑えるんだ。」
あたしはさっき思ったことを取り消すかのように言った。
「俺だって笑う。」
そう言った風雅の顏はもとの無表情に戻っていた。
「お前も笑え。」
風雅が突然言った言葉にあたしは足を止めた。
「どうして、そんなこと言うの。」
あたしが止まったことで風雅も止まってあたしを見た。
「お前が、一度も笑わないから。」
風雅はあたしの目をまっすぐに見つめて言った。
「関係ないでしょ。」
あたしは風雅から目をそらしながら言った。
その時の風雅の目がどんなものだったかは目をそらしていたあたしにはわからなかった。