「うわ、おいしそ。さっすが結衣さま」
「当たり前ですー」
桜の世界からふと日常を思い出せばふざけたノリが戻って、洋平は結衣が大好きな子供っぽい笑顔を見せてくれた。
笑わなければ滅多に覗かない八重歯を知っていることが幸せで、確実に心が豊かに満たされていく。
遠足みたいで楽しいとドット柄のペラペラしたレジャーシートを敷く中、ござを厳格に広げる団体の方が本気でお花見をしているみたいで羨ましかった。
でも高校生らしくて安っぽいビニールもアリかなと勝手に解決し、いつか家族で来た時はござを丸めて持ってきたいと一方的に夢を見た。
もちろん、今隣に居る人を旦那役に当て嵌めたのは内緒。



