桜色を覚えた絵



今この山に登った全員が桜を楽しみにして桜を満喫していることは、

すなわち自然を味わいたいからのあらわれで、それは凄くおかしな話だと結衣は思う。

だって、平成に負けないよう自然は量を減らせど当たり前にあるのに、

なんだかわざわざ意識して触れ合わないと、通り過ぎてしまっていたのだから。


だって結衣は驚いた。

小さな頃、普通に摘んできた白詰草やなずなやスミレ、名前も分からない赤紫の花や黄色いポンポンみたいな花を中学生になるとすっかり忘れていたなんてありえない。

普通にあったことが普通になくなっていた。