せっかくデジカメがあるのにとどこかで分かっているが、やっぱり結衣は洋平が見る先を追うことが癖になっているみたいだ。
それを綺麗だと思うことを誰かに笑われないと胸を張って言える人でありたい。
「桜のさ、花びらの、淡いドレスとか、ふわって。いいよな? 風にふわって」
山の頂上だった広場から離れると少し静か、桜のトンネルみたいになっている坂道で洋平が今日一番長い台詞をくれた。
だから彼女も「うん、きれい。シフォンで重なって、ふんわり膨らんで……さくら」と、少し長く返事をしたら、
彼は春の花たちよりも可憐に笑ってくれて、自分が好きな人の笑顔を作る事実が嬉しくて堪らなかった。



