桜色を覚えた絵


いつもそう、クリスマスも体育祭もバレンタインも文化祭もデートをすれば必ず翌日『もっと撮れば良かった!』と後悔するのに、

いざその時になると好きな人の隣に居るだけで精一杯になってしまう。

嬉しくて幸せな瞬間こそ写真に残せば絶対数年後に見た時に喜べるのに、自分ときたら恋をすることしかできない。


好き。

ああ、淡い想いの裏をさらけだすなら、本当は洋平が見る世界を結衣もちゃんと味わっておきたいだけなのだ。

彼の視界をデジカメのモニター越しではなく裸眼で知りたいだけなのだ。

そうして後から好きな人が今日のことを話す時、頭に浮かべる光景が一緒でありたいのだ。