桜色を覚えた絵


だって写真撮影に夢中になっているともったいない、だって桜を眺めた後の清潔な瞳で自分なんかを見つめてくれる洋平の一瞬しかない今を見逃したくない。

馬鹿な結衣は洋平が大好きだ。
洋平が彼女にしてくれる自分はずっとずっと彼氏が大好きだ。


「ひらひら、」

手の平を空に向けて桜を集める姿はお約束だが可愛くて、「いっぱい」と喜ぶ彼はベタだが愛おしい。

ほら、かっこいい人を保存できるチャンスなのに、両思いの二人が目にした特別な景色を写真にすればまた見ることができる瞬間となるのに、

馬鹿な結衣はカメラに記録するという役立つ作業を忘れてしまう。