桜の木の下、専門学生らしきカップルが魔法の杖で呪文を放つ要領で、携帯電話を持った手を伸ばしている。
電子音が鳴るからいまどきとうぐいすが歌うから古風との融合を面白いと思う反面、
そういえば結衣はなぜ写メを滅多に撮らないのかと疑問いった浮かんだ。
手軽過ぎて味気ないからだろうか?
いいや、何気ない日常を切り取ることができて便利だと知っている。
分からない、本当は今だって自分が持っているデジカメも好きではなくて、
一昔前に定番だった使い捨てカメラが一番大好きだ。
例えば修学旅行。
お小遣で買えるし、限られた枚数しかないから撮る時を凄く迷うあの感覚が忘れられない。
『今撮りたいけれど後々足りなくなるかもしれない、だったら我慢しようか、いいや撮りたい、でも――』



