「あぁ」
あの人が、大きなビニール袋―――
ごみを入れた袋―――をつかむ。
ついでに、外に出して行くのかな。
そして、あの人は、玄関を出よう
とした。
「何を持ってるの?」
そのとき、少し大きい声が、
玄関の奥から聞こえて来た。
「―――まぁ!何してるの!」
少し髪の白くなった女の人が、
玄関まで出てきた。
「いけませんよ。置いてらっしゃい」
と、厳しい口調で言った。
「母さん―――」
「男がごみの袋を出すなんて!
ご近所に笑われますよ。どうして
自分で出さないの」
「すみません。つい、ついでに―――」
「それが主婦の役目でしょ。たいした
事もしてないのに、うちの子に、ごみまで
出さすのね」
「すみません・・・・・・」
「さ、そんなものそこに置いて、早く
お仕事に行きなさい。ちゃんと、出して
置いてくれますよ」
その女の人は、あの人のことを
「○○ちゃん」と呼んだ。
「いくらお腹が大きくてもね、昔はもっと
重いものでも運んだものよ。今の人は、
楽をすることしか頭にないんだから、
本当に!」
「申し訳ありません」
「私が出しましょうか、あなたがいやなら」
「いいです、私がやります」
「じゃ、そうしてちょうだい」
―――あの人は、自分の母親と
妻のやり取りを、聞いていた。
聞こえていないハズはなかった。
でも、あの人は何も言わなかった。
その場にご


