『おかけになった電話は現在電波の届かない所にあるか……』

「加藤さんの実家どんだけ田舎なのよっ!」

叫ぶやいなや、勢いに任せて桜は携帯を投げつけた。

床に叩きつけられる寸前で、有馬がそれをキャッチする。

「危なっ。壊れますよ!」

「有馬がキャッチしたからいいじゃないの」

「そういう問題じゃないでしょう」

「不動産は!? どうだった?」

有馬の呆れ顔など気にも留めず、桜は詰め寄る。

桜に携帯を渡しながら、有馬は残念ながら、と前置きをした。

「繋がりませんでした」

ぐう、と桜が言葉にならない音を漏らす。

昂った気持ちを抑えるためか、ゆっくりと深呼吸をした。

「……騙されたわけね。加藤さんも、有馬のお兄さんも」

深呼吸の甲斐あってか、どうにか落ち着いた声音だ。

「みたいですね……。まあ、兄貴のことだから、何かしら落とし穴はあると思ってましたけど」

深いため息をついて、有馬は片手で顔を覆った。