「あなたも今日入居?」

「はい。あ、何階ですか?」

「三階です」

「じゃあオレと同じ階ですね。オレ、有馬環っていいます。新入生なんですけど、そっちは?」

「なら、わたし先輩だ。高瀬桜、2年生」

ちょっとした自己紹介を交わしながら、桜はちらりと神もとい有馬を盗み見た。

細身の体躯に、優男風の年上のお姉様受けしそうな顔立ち。

心の中で桜はガッツポーズをした。

階に部屋は横並びに3つずつ。

桜の部屋は真ん中なので、必然的に有馬が隣の部屋になる。

アパートは素晴らしいし、隣人は目の保養になりそうだし、幸先がいい。

「エレベーター付の学生アパートなんて珍しいですね」

「だよね。間取りとかもすごいいいし」

「かなり破格値ですよね」

「不動産会社に騙されてたりしてね~」

桜の言葉に有馬がまさか、と笑ったところでエレベーターが止まった。

ドアが開き、有馬が桜を促す。

さりげないレディファーストだ。

「ありがとー、有馬。……あ、ごめん。呼び捨てにしちゃった」

「先輩なんですから、別にいいですよ」