にまにまとだらしなく顔をにやけさせていた桜は、エレベーターの前ではっと我に返った。

「ぼ、ボタンが押せない……」

ずしりとその重さで存在を激しく主張する段ボールを、桜は忌々しげに見つめた。

段ボールを一旦降ろせば済む話なのだが、生来怠惰な性分の桜は、何とかこのままで押せないかと画策する。

「くっ、この!」

右肩をボタンに近付け、ぐいぐいと押しつける。

しかし、そう上手く行かないのが世の常。

微妙に位置がずれているのか、なかなか思うようにならない。

そろそろ腕も痺れてきた。

仕方ない。

一回荷物置くか。

小さくため息をついて、段ボールを地面に置こうとしたその時だった。