食パンをかじりながら登校の準備をしていた桜は、玄関を通りかかってはっとした。

靴箱の上で光るブツ。

鍵だ。

「うわ、有馬鍵忘れてんじゃん。本当急いでたのね~」

もう、慌てんぼうさんなんだから☆

鍵をつまみ上げて、桜はぷぷっと笑う。

有馬をそこまで慌てざるをえなかったのは、誰かさんの朝食を作らなければいけなかったからだ。

寝汚い誰かさんの。

「にしても、鍵忘れるとか困るわね。有馬帰ってくるまで、わたし起きてなくちゃいけないじゃない」

1回寝たらチャイムくらいじゃ目ぇ覚めないし。

自覚はあるのか、桜は心でそう付け足す。

パンを飲み込んで、桜はリビングのテーブルに鍵を放り投げた。



それが事の起こりである。