「先輩、先輩! 起きてくださいっ」

ノックの音は、既に『コンコン』から『ドンドン』にシフトチェンジしている。

「桜先輩~っ!」

10分程前からずっとこうして呼び続けているのだが、桜は一向に目を覚まそうとしない。

随分と寝汚い性質らしい。

「オレ、今から出掛けるんです! 急いでるんで、今日の食事当番代わってください!」

寝ていると分かっていながら、とりあえず頼んでみる。

すると、ドアの向こうから何やら声が聞こえてきた。

やっと起きたか。

ほっとしたのもつかの間、返ってきた言葉は、あっさりと有馬の安堵を破壊した。

「んむ……ベーコンエッグには……ピンクの味噌田楽……」

完璧な寝言だった。