「今更もう空いてる物件なんてないですよね」

「そうね、ないだろうね。時に有馬、悪い知らせといい知らせがありますが」

おざなりな返事をして、桜は有馬の前に1枚の紙をちらつかせた。

黒い字で何やら書かれているのは分かるが、読めるまでには至らない。

有馬は遠視ぎみなのだ。

読むことを諦めた有馬は紙から桜に視線を移す。

「少しでも気分を浮上させたいんで、いい知らせからお願いします」