片言な発音の女の英語教諭が問題用紙を配り、その問題を解くように指示をする。

大方中学英語の復習のようだ。私はシャーペンを紙の上に走らせ、問題を解いていく。

「ちょっと、そこの…寺内君!ぼうっとしてないで問題解きなさい!分からない所があるなら先生に聞くとかして…」

「…すいません。もう、終わってるんです」

寺内君のその言葉が信じられず私は勢い良く後ろを向く。

「そう…。悪かったわね」

バツが悪そうに英語教諭が謝る。そして、先生の目が離れた所で寺内君が笑いを含んで私に問いかける。

「そんなに驚いた?」

「…早いなって思って」

本当にちゃんと埋まっててしかも字が綺麗で別世界のような人だと思った。

「一応父の会社が外資系企業だから、英語の勉強は徹底的にさせられたんだ」

そっか、と納得して前へ向き直る。シャーペンを再び紙の上に走らせた。

「えーと、ながのさん?あ、失礼、ちょうのさんね。黒板に問2の答え書いて頂戴」

私は小さく溜め息をつきながら椅子から立ち上がる。もうこんなことは慣れっこだし、今更どうしようという訳ではない。

極力綺麗な長いチョークを持ち黒板に答えを書く。

「はい、オーケー」

と先生から声がかかりどうやら書いた答えは合っているようだった。

初っ端の授業から当てられるなんてついてないな、と思ったが、席に座った後で、後ろからドンマイと声を掛けられそんな思いも吹っ飛んだ。

今日は良い日だ。