「ただいまー」

そう言って誰もいないであろう家に上がる。リビングのドアを開けようとした時、何もしていないのにぱっとドアが開いた。

「里穂!」

ぎゅっと抱き付いてくるのは仕事中であるはずの、母親だった。

「お母さん…!?どうして…」

「学校から電話が来たの。里穂が襲われたって聞いて…慌てて帰ってきたの」

「そんな…よかったのに…」

背中に回った母の手が背中をさする。

「何言ってんの。娘に何かあったら親は居てもたっても居られなくなっちゃうの」

「お母さん…」

「そうだ、寺内君だっけ?家まで送ってくれたの。明日ちょっとしたものだけど、このお菓子、渡してくれる?」

頷いてそれを受け取り鞄の脇に置いた。先生からは事細かに話を聞いたようだった。

「明日、それ、忘れないでね」

「うん」

そう言って私はソファーに腰掛ける。

重い睡魔が私を遅いゆっくりと瞼を閉じた。