気絶した二人と車の近くに今度は白い高級車が止まる。

私はそのブレーキの音ではっとして顔を上げる。

「寺内君…大丈夫?怪我してない?」

「俺は平気…。長野は?」

大丈夫、と言って掴まれた左腕に右手を当てる。

じんわりと其処が痛かったからだ。

「びっくりした…。なんだったんだ、今の…」

「私を捕らえるの…誰かの命令みたいだった…誰のだろ?」

「思い当たる節は?」

私は首を振りかけた。

今日は、悪夢の水曜日だ。

「お父さん…」

「え?」

「私の父親が…もしかしたら私と暮らすがためにこんなことを…?」

「長野、それ…どういう…」

そう聞こうとした寺内君の声は遠くから叫ばれる声によってかき消された。

「お前ら大丈夫か…?」

体育の先生が焦ったように問う。

「大丈夫です」

私は震える声を何時ものように出して答えた。

「警察を呼ぼう。それから、お前は…」

「俺が送っていきます。もう少しで車が来る筈ですから」

「分かった。後日、話は聞くから。気を付けて帰れよ。車が来るまで先生も側に居るから」

小さく頷くと先生は携帯電話で警察に連絡を取り始めた。



**

「…何あの子。由行の側うろちょろして…」

鼻で笑った少女の本当の性格は白い車に乗っている者しか分からない。