隣でくしゅんと可愛らしいくしゃみをするのは先程闇に身を寄せた一人の少女。


真っ白な肌の色こそ変わらないけど、目の色は真っ赤な薔薇のよう。


ゆらゆらと揺れる悪魔特有のしっぽは、まだなれない感覚に何度も揺れる。



「ここは、どこ?」



「…見たらわかるよねえ。みんな死んだような顔してるじゃん。ま、生き生きしてるのもいるけどねぇ。」



「ほんと…だ。」


メロナは今更だが少し後悔したようにカタカタと震えた。まだ、光が少し名残惜しいのだろう。
しかし、闇の空気はやはり美味しい。



「わたしも、あんな風になっちゃうのかな。」



「さあねー。」



「アルミスさんは、元はわたしと同じ光だったんですか?」



あたしは片手に古めかしい煙管(キセル)を持ちながら目を細める。薄暗い世界に混じるように煙は消えていく。



「そう、見える?」



クスリ、と笑うあたしが怖かったのかメロナはびくりと大袈裟に揺れた。



「み、えないこともないです。」



「ふうん」



光にいたら絶対に浮くと思うけどね、あたしは。



さて、今からどうするか。一応…ボスにでも報告しておくかぁ。



煙管からプカプカと煙を出しながらあたしは足早に歩き出す。後ろからあたしを追いかける足音が聞こえてきて、少し楽しくなった。



兄のために闇墜ちね、なかなかやるなぁ…この子。人のために闇墜ちする奴は早々いない。


自分が大切だからな、あっちの人間は。
こっちは大概そうだけどねー。