「え…先って、何が?」
更に強く手を握られる。
「君が広川を好きになるよりも、ずっと前から、僕の方が先に…中山さんのこと好きだったんだ。」
え…?
「今みたいに、中山さんが髪を下ろして社交的になる前から、ずっと見てた。それなのに…途中から出てきた広川なんかに、君を渡したくない。」
「きゃ…。」
ぐいっと、空き教室に入れられて、壁に押し付けられた。
「ど、どうして?それならどうして広川のことが好きって話を聞いてくれてたの?!」
パニックで、何がどうなっているのか理解が出来ずにいた。
「僕だって、君に話かけるのには勇気がいるよ。だから最初は皆にまぎれて、質問するふりして話しかけたんだ。…その時に分かった。君が広川のこと好きなんだって。」
考えられるのは、広川がピースしてくれた、あのとき。
「だから、君が悩んでいる原因が広川だってわかってた。でも、悩みを聞くようにして話しかけないと、君は僕のことを普段から意識してくれないだろ?」
痛いほど、健吾くんの気持ちが伝わってくる。
私も健吾くんも、同じなんだ。
恋をするってことは、幸せとは限らない。

