「別にそんなんじゃないよ、ただ…。」



「ただ?」



その先の言葉が浮かばない私を、覗き込んでいる広川。


うぅ…と恥ずかしくて赤面していると、耳元でいたずらっぽく何か囁いてきた。




「なんなら、ホンマに俺が恋人になったろうか。」





え…


――普通の女の子が聞いたら、とても嬉しい一言だったと思う。



私は、広川を押し退けた。



「…本気じゃないくせにそんなこと簡単に言うなんて、最低だよ!」




私はバッグを持って教室を出ていった。




広川は、本気じゃなかった。



だって…

関西弁だったから。



何故か、涙が溢れてくる。



ううん、わかってる。

悲しいからだ。




本当は、全部分かってた。



カラオケで鼓動が跳ねたのも



広川が女の子に囲まれてるのを見たくなかったのも



関西弁で告白まがいの台詞を言われて悲しかったのも――










全部、広川の事が好きだからだ。