初心者レンアイ(仮)


その後、内海くんと千夏ちゃんが一緒にカップリングの曲を歌っていた。


「ったく。あいつらラブラブやな。」


悪態をついたように聞こえる台詞だったけど、広川くんの表情はとても優しげだった。


「うん、そうだね。」


そんな広川くんが可笑しくて、思わずクスッと笑ってしまう。



「委員長って、元々こんなんなんやね。」



「え?」



急に広川くんが言った事に、動揺する。



「だって、委員会ん時はいつもおとなしめやん。容姿とかもそんな感じやし。もしくは嫌われてんのかなって思っとったわ。ちょっと印象変わった。」


と、言われても…


私はもじもじしながら言った。



「私、人見知り激しくて…千夏ちゃん以外の人と話すのが苦手なの。べ、別に会話が苦手ってだけで広川くんが苦手なわけじゃ…。」



「今、できとうやん。」



「え?」



私の言葉を遮って、広川くんは言った。



「今、船津以外の『俺』と会話してるやん。」



あ…


そういえばそうだ。



私今、広川くんと普通に会話してた。



どうしてだろう。



疑問に思っていると、広川くんは更に言葉を付け足した。



「そんで、広川くんじゃなくて『広川』な。それから委員長の事中山って呼んでもええか?」


その言葉に、私はコクンと頷いた。




そして、曲が終わりかけた頃…広川くんは耳元で囁いた。





「俺、学校でも今の中山がいい。髪も…下ろした方が綺麗だ。」





ドクンと、鼓動が跳ねたのが分かった。





…最後に囁いた言葉は…





標準語、だった。