あんたとあたし。




 はぁ・・・最近あたしおかしいかも。



 なんて、思いながら、木陰に入り、記録用紙で風を煽った。

 
 グラウンドの隅っこで、ピッチングをする龍を見て、がんばるなぁ・・・と何気に感心した。

 キャップのツバの部分を持って、はぁっ、と息をつき、不意に顔を上げる。


 ぱっと上を向いた瞬間、龍と目が合う。


 
 気づかないフリをしたかったけど、出来ないくらいにバッチリ視線は交差して。


 どうしようか、一瞬と惑った。

 目が泳ぎそうになった瞬間、龍がふわりと笑った。


 ・・・びっくりした。



 人間、笑ってれば可愛く見える、なんて、親父が昔言ってた。


 確かにそうなのかもしれない。

 今、龍が可愛く見えたことがそれを証明する。
 けど、何か違うものを感じた。

 あったかさとか。やさしさとか。

 寂しさも、むなしさも。


 世の中のいろんな感情をかき集めて笑っている。


 一瞬の出来事が、あたしを変える。