「あたし、そんなに役になんか立てないって。」


 「そんなことないって。」と言いながら、少し照れているのか頭を掻く仕草を見せた。

 そのちょっとした仕草をかわいいなんて思うあたしがいて、思わず唇をかんだ。

 点滅していた青信号が赤色に変わり、あたしたちは足を止める。


「みんなが、どう思ってるのかはわかんないけどさ。」


 ふと、見上げた龍の目が遠いところを見ながらやさしさを佩びていた。


「俺個人の意見としては、お前のマネージャー、大歓迎。」


 少し、うつむき気味になっていたあたしの頭をくしゃくしゃとはにかんだ顔して撫でた龍。

 一瞬時が止まったように感じて、手が頭から離れた瞬間、はっとした。

 いつの間にか青に変わった信号が、彼の足を運ばせる。


 横断歩道の途中で止まって軽く手招きをしているけれど、頭にははてながいっぱい浮いてる。

 動揺してんの、丸わかり。


 走って、背中を追いかけた。