片親のあたしは親父に育てられた。
あの人、もともと大の辛党なのに、あたしが小さいとき、よく泣くもんだから、キャラメルをくれてたんだって。
キャラメルを渡せば泣き止むもんだから、それが習慣になって。
親父は、キャラメル、食べないけど。あたしは今でもよく食べる。
キャラメルが記憶の片隅にあることは確かなんだけど、親父からキャラメルをもらった記憶なんてない。
親父に言うと、昔は可愛げがあったのに、なんて言われた。
「あたし、ちょっと見てくる。」
マンガに集中しすぎて、何にも気づかなかったあたしは彩の一言で顔を上げる。
小走りに走っていく彩のバックに、体育館前に女子生徒が集(タカ)っているのが見えた。
・・・なんかあったのかな。
一瞬、気にしたけど。
まぁ、彩行ったし、大丈夫。なんて、勝手に思う。
そうしてあたしはまたマンガ。

