しばらくしてから、彩が戻ってきて。
体育館へ走って行ったときみたいな不安な顔じゃなく、笑いながら戻ってきた。
「なんだったの、あれ。」
くすくすと笑いながら、彩が答える。
「修とたっちがチーム分かれて5対5の試合始めたから、見に来てたみたい。」
おかしいでしょ。と笑いながら、ベンチに座る彩の顔は嬉しそうだ。
“本気で・・・、本気で恋、してるんだよ、あたし。”
泣きながら電話をかけてきたのは1年の夏。
電話に出て、一発目でそんなこと言うから、ビックリして電話を切りになったことを覚えてる。
隣で、照れくさそうに笑う、この彩が、掛けてきた電話。
あたしはこの電話が、かかってくる前から気付いていた。
修へ向けられる目が変わっていたのに気づいたのはいつだっただろう。

