「どっちがいい」


 左手にはミルクティー。右手にはオレンジジュース。

 前に、龍がミルクティーがいいと言っていたことを思い出す。


「買ってきてくれたんだ?」


「だって、頑張ってんじゃん。」


 ありがと、と言いながら、右手に手を伸ばした。

 すると、オレンジジュースはあたしから遠ざかり、左手のミルクティーが手渡された。


「え・・・」


「あ、ミルクティー、嫌いだった?」


 缶のプルトップを開けて、オレンジジュースに口を付ける龍。

 ・・・もし、あたしがミルクティー嫌って言っても、無理じゃん。


「龍、ミルクティー好きじゃないの?」


「好きだよ?」


「じゃあ、いいよ。」


「好きだろ?ミルクティー。」



 変に気を使われてる気がしたけど、素直にうん、とうなずいた。



「なら、遠慮すんなって。」



 少し笑って、またオレンジジュースを口にした。



 もう一度ありがと、と言って缶のフタを開けた。


 広がる甘いそれを、嚙みしめる様に飲み込んだ。

 しばらく沈黙が続く。


 ・・・不快な沈黙じゃない。


 あたしが座るベンチと少し隙間が空いた隣のベンチに龍が座る。