あんたとあたし。




 子供っぽいってっからかわれそうな気がして、彩の前でしか食べないようにしていた。

 だから、龍が知っていることが、恥ずかしかった。


「キャラメル、好きなんだ?」


 いつも食べてるって知られてるのに、好きじゃないなんていえないじゃん。


 恥ずかしくなって、黙ってうなずいた。


「意外と可愛いな、お前」



 少し笑って、頭をわしゃわしゃされた。

 
 ・・・うっわ・・・・・・。

 反則。反則技だって。そんなの。


 ジャージだし、関係もなく、ベンチで胡坐を掻いてるあたしの正面に龍はいる。

 当たり前のように、その笑った顔はあたしの眼に映る。

 

 龍、笑うと眼が一気に細くなって目じりに薄く皺が出来んの。

 口角は両方綺麗に上がって、低めの声が響く。


 ものすごい速さで心臓が鳴る。


 そりゃ、もう、苦しいくらいに。


 部室からもって出てきていた自分の鞄の中から、キャラメルらしき箱を取り出す。


 「偶然、俺も好き」と、箱から二つ出して、一つあたしにくれた。


 言葉に詰まりながら、ありがとうというと、また少し笑った。



 みんなちらほらと帰り始めて、誰もいなくなった部室に入ると、なぜか龍もついてきた。



 「帰んないの?」と聞くと、「じゃあ一人ですんの?」と洗濯物のかごを指して言われた。


 洗濯籠には、大量の練習着が山盛り。


 手伝ってくれるんだ。

 自然と顔がほころんだ。