サムトの意識が戻ったのは、その日の夕方だった。
その間、ミドリはどこへも出掛けず、ずっとサムトの看病をしていた。
悪い人間には見えない。
だがコイツはオレの目の前で須原サンを殺した。
平気で殺人を犯す人間が善人のわけがない。

「サムト、と言ったな。オマエの意見を正直に申してみよ」

サムトが落ち着くとミドリが早速尋問を始めた。

「こらミドリ。申してみよはやめろ。メチャメチャ偉そうや」

「話してくれ、と言えばよいのか?」

「ま、それなら許す」

「恐れながら申し上げます」

サムトが口を開いた。

「別に恐れんでもええがな」

オレがすかさずフォローする。
って言うか、まるで時代劇を見ているような上下関係だ。

「ボクは、兄の無実を信じています。って言うか、兄は無実です。確かに兄は国王を憎んでいました。だけどお后様は天使のようなお方でした。そんなお后様を兄が殺すはずありません」

「オマエも、ペイジャックは母上を殺していないと申すのか。猟と同じだな」

「当たり前やろ。須原サンは殺人犯になんかならねえ」

「根拠はあるのか」

「ある。須原サンは天使を殺すような男やない」

「そんなの、根拠にならない」

「もしもホンマに殺したんなら、須原サンは絶対に自首する。そういう人や」

「死刑が分かっていても自首するのか?」

「する。ホンマに王妃を殺したのだとしたらな」

「じゃあ、ベッドルームまでの血痕と、メイドの目撃証言はどうなる?」

「作り話や」