5、動きはじめた嘘


ドクターの診察を受けてからオレとサムトは客間に通されたが、サムトの意識はないままだった。

ミドリとは長い間会っていなかったわけではない。
なのになぜかとても懐かしい気がするのは、知らない土地で臆病になっているせいだろうか。

だが、懐かしがっている場合ではない。

「この者は誰だ?」

ミドリがサムトの体に手を触れた。

「ひどい怪我だな」

「坊主に触るな。コイツは須原サンの弟や」

「ペイジャックの弟?」

「サムトというねや。コイツはオマエを憎んでいる」

「そうであったか」

ミドリは暫くサムトの顔をみつめていた。

「兄の敵討ちに来たということか?」

「そうや」

「オマエはどうしてココに? 自分の意志で来たのか? それとも無理やり連れて来られたのか?」

「オレの意志で来たのや。須原サンに頼まれて。オマエを殺すためにな」

「そうか・・・」

「はあ? それだけかいな? 言い訳するとか、オレの執念に脅威を感じるとか、もっと何か別のリアクションないねんか?」

「とにかくオマエたちの話を聞かなくちゃ。サムトの回復を待たなくちゃ」