「ここから50キロほどあります。歩いて行くのは無理でしょう」

「車はあるか?」

「ありません」

「バスは? タクシーは? 電車はねえのか?」

「バイクならあります」

「お、まさにオレ向きやんか」

「乗れるんですか?」

「当たり前やろ。オレを何だと思ってんねん? クライシスやでえ」

「はあ・・・」

「どれや? 排気量はいくつや?」

「兄が愛用していたバイクです。電池もこれを使えば」

「電池? バイクが電池で走りよんのか?」

「え? ほかに何かありますか?」

エンジンをかけた。
まずまずのかかりだ。

しかしこの寒空の下、過酷なツーリングになりそうだった。

「坊主。オマエはココで待ってろ」

「行きます。ボクのようなガキでも何かの役に立つかも知れません。連れてってください。お願いします」

「役に立たねえよ」

「お願いします!」

サムトの目は真剣だった。
兄のカタキを討つことができたなら、自分は死んでも構わない、そんな決意の目をしていた。

「分かったよ」

そう言ってサムトをバイクの後ろに乗っけた。