須原サンは無抵抗の人間を殺せる人ではない。
無抵抗の人間を殺したならば、オレに無念を託すなどとは言わない。

「そやから絶対に須原サンには身に覚えのないでっち上げや」

「なんでそんなこと言うんだよ? 母上は殺されたんだ。オレは見たんだ。体を切り刻まれ、目を開けたまま、グシャグシャになった母上の体は、血の海の中に沈んでいた。想像できるか? 自分の母の、そんな無残な姿を、オマエは想像できるかッ!」

普通の人間は母のそんな姿など想像しない。

「ヤツが父上に憎しみを抱いていたことは知っていた。だけどオレは無謀なアロン部隊の結成を止めてやったんだ。死に急ぐなと忠告してやった。それなのにヤツらには聞き入れて貰えなかった。結果はアロン部隊の惨敗だ。そんなこと戦う前から分かっていたことだ。オレはそんな若者たちに同情もしたよ。心底同情していた。なのにペイジャックは、オレの母を刺し殺し、そしてクーデターを起こした」

「・・・・・・・・・」

「オレはヤツらに、ペイジャックに同情していたんだ。救ってやりたかった。なのにヤツは無抵抗の母上を殺した。王族に憎しみを持っているヤツだからこそ、あんな残酷な殺し方ができるんだ。ヤツだから、ペイジャック・バーンだから、だからあんな残酷な」

「違う。須原サンじゃない」