コスミックダスト-戦塵の宮殿

お袋の遺骨は盗まれたのかも知れない。

「盗まれたあ? そんなもの誰に?」

「宇宙人」

「はあ? 地球人の骨なんか盗んで何すんだよ?」

「メイド」

「バカか。日本で死んだ人間は、宇宙へ来たって生き返らないよ」

「そうなのか」

オレが一度でも寺に参っていれば、お袋の遺骨がないことに気付いたはずだ。
遺骨はいつからなかったのだろう。
初めからなかったのだろうか。

住職の話だと祖母は知っていたようだ。
ということは、オレのお袋はもしかしたら死んでいないのかも知れない。
病死したというのは、オレに本当のことを隠すための嘘。
お袋は男を作って出て行ったのかも知れない。
それなら辻褄が合う。

だけど、出て行ったのなら、なんで幽霊になってオレの前に現れるのだ?

あの幽霊はお袋ではないのか?

お袋でないなら誰やねん? 
女に化けて出られるほどオレは悪い男ではない。

なんて考えていても埒があかない。

「行くぞ、須原サンのアパート」

前進あるのみ! 
結末は神のみぞ知る、だ。

オレは須原サンから預かった鍵をポケットに突っ込み、須原サンのアパートに向かった。