コスミックダスト-戦塵の宮殿

1ヶ月ぶりの大阪はすっかり暑くなっていた。

30年ぶりの猛暑、とか言って5月になったばかりなのに気温は30度を超えていた。

いや、正確にはまだ大阪の上空だ。
 
ミドリが 「S艦」 と呼ぶ宇宙船で着陸場所の安全を確認する。 
「人目につかず騒がれず」 が着陸の第一条件だ。

「どこ止めるのや、これ?」

「初めて日本に来たとき、離着陸に最適の場所みつけたんだけどね。降りようとしたら管制塔の人にしつこく尋問されて、着陸の許可もらえなかった。キルジャ星のラルフ・シーザだとちゃんと正直に名乗ったのに、誰も信じてくれないんだ。だからあきらめた」

関西国際空港のことだろう。
管制塔のパニックが目に浮かぶ。

「だけどほかにいいところを見つけたんだ。ホラ、もうすぐ着くからシートベルト着けて」 

ミドリは着陸態勢に入った。
 
まさか。
 
まさか?

まさか甲子園球場!

「ああーッ!!!」

ミドリが叫んだ。

「そんなバカな!」

「な、何やねんな!」

「人がいるーッ!!!」

「はあ?」

阪神巨人戦の真っ最中だ。