音葉は軽く身なりを整え、意気込んで会場の大きな扉を開けようとするが、これが重くて重くてなかなか開いてくれない。

「なんでこんな不便な扉なのよ!」

仕事場から直行したので、スーツ姿だった音葉は、大人気なく扉の前で仁王立ちして、小さな声でそう言い放った。


「設計ミス、設計ミス。」

後ろから声が聞こえたかと思えば、スッと視界に男性の手が現れ、なかなか動かなかった扉が大きな音をたてて開いた。