結局、前のデートは部屋でお菓子食べて帰った。

 彼は呆れただろうか。
 初デートというのに体を温めることを最優先して
全く色気のないパンツルックでやって来た私を。
 全く会話できていなかった私を。
帰り際だけ笑顔になった私を。

 そんな事を考えながらの翌日。
相変わらずのつまらない授業が終わり、これまたつまらないお昼休みが始まる。
 大声で動き回る同級生に嫌気をさしながらもぞもぞと鞄の中から弁当と水筒を出した。

 と、そこに
「弁当一緒に食べへん?」
 顔を上げるとつい昨日見たばかりの顔。
手にはコンビニの袋が握り締められている。
今まで一度も一緒に弁当など食べたことがないのに、何故。
「急にどうしたん?」
「いや一人で食べてたから。友達休み?」
「いつも一人やけど」
「そうなんや。図書委員の山下さんとかは?」
「あー、別の子と食べてると思う」
 彼は気まずそうな顔をした。
 事実を述べているだけなのだから気にすることないのに。
 決して私と山下さんは仲が悪い訳でも何かあった訳でもない。
その程度の距離感というだけなのだ。
 その頃教室の最後列では
「えー、時間無かったから今日めっちゃ適当やねん」
 という恒例の料理アピールが始まっていた。
適当でもこのくらいのレベルは作れますよという意味合いがひしひしと伝わってくる。
 私と彼は無言。アピールが延々と聞こえてくる。
「なあ」
 彼が口を開いた。
「その弁当、自分で作ったん?」
 明らかに、彼の言葉には期待が込められていた。
彼女としてどう答えるべきだろうか。
親が作ったという事実を嘘つくわけにはいかないが
答え方によっては親と仲良しアピールにもなるし
「晩御飯は作っている」と付け足すことで料理好きアピールにもなる。
けれど、めんどくさい。
「親が作った」
 そう言うとほうれん草のおひたしを大量に口の中にかけこんだ。