事前に雑誌や知り合いの会話に聞き耳をたてて何かヒントを探って何度も、

いま直面している場面に取るべき行動を考察してきましたが、
湧き上がる気持ちに負けてしまって
もうなにがなにやらさっぱりでして、


頭に浮かぶのは、彼女の
にっこりしてお客さんを待つ姿だけで、
そこに自分はどう接していいのか、
全く分からなくて困ってしまっていました。


すると、彼女はシフォが方に掛けているかばんが、
物陰からはみ出ているのに気付き、


彼女のほうから近付いていって声を掛けました。

「シフォ君、おはよう」

彼女に袖をつままれたときに、ハッとシフォは気付いて振り向くと、
目の前で彼女のにっこり笑顔を目の当たりにしてしまって、気絶しそうになりました。


「あ、あ……」


口を半開きにあけて固まっていると、
彼女は彼の袖を引っ張り、
彼はそれにつられるようにして立ち上がります。


自分の赤らめた顔を彼女に見られている。

どうしようとオロオロして、
目線をそらしてうつむき、後ろ手にして。


それから足幅を縮めて不安定な体勢をしているシフォに、

「お姉さんのところに、お手紙届いている？」


とやさしく話しかけました。