星、流れ


和歌の言う通り、嫌いなわけじゃなかった。

光哉からの電話もメールも、楽しい。

あの日冷めた気持ちも除々に戻って来ていたりもする。

でも、好きとか考えると違うんじゃないかって頭が止める。

心は光哉を求めていても、頭がそれを拒んでいた。

【メル友と恋愛なんて】という私の考えが余計に邪魔をしているのかもしれない。

逢って気持ちを確かめるかぁ……。

逢ったら、気持ちがまとまるだろうか。

頭に邪魔されず、本当の心の声が聞こえるかな……。

携帯画面を見つめたままでいると、聞き慣れた音楽が鳴った。

画面に表示される【☆ミツヤ☆】の文字。

ついに、逢うのか……。

息を吸い込んで携帯を耳に当てる。

『もしもし、菜々?どこにいる?』

「今ね、入口の所。白いベンチに座ってる」

『ベンチ……』

探してる様な独り言に鼓動が限界まで速まる。

やばい。

私、死ぬかも……。

『もしかして黒いハットかぶってる?』

「へっ?……うん」

その言葉に慌てて周りを見渡す。

携帯持って喋ってる人は……。

って、居過ぎだから!!

殆どの人が携帯かけていて光哉らしき人を特定出来ない。

『白のタンクトップ?』

楽しそうに言う光哉の声に頷く。

『今頷いた?』

また楽しそうな声が聞こえて、周りを見渡すが特定出来ない。

どこにいるのよー。

何となく恥ずかしくて俯く。

『「菜々?」』

「えっ?!」

携帯からと、上から聞こえた声がかぶった。

驚いて見上げると。

『「当たり」』

と、子供の様に笑う少年が一人……。




この笑顔は、多分一生忘れない。